引伸ばしレンズの極意 その1
 カメラ本体に付属のレンズで飽き足らなくなってきた。

 もう少しピシっとした解像感が欲しい。

 そんなアナタにピッタリのレンズがあります。
 
 かれこれ10数年前、西暦2000年前後まではフィルムの現像と印画紙への引伸ばしが一般的でした。

 印画紙に画像を出す際に、絶対必要なアイテムの一つに『引伸ばしレンズ』がありました。

 可能な限り、フィルムに再現された画像を忠実に印画紙の上に転送する役目を持ちます。

 そのため、解像感は非常にシャープです。

 但し。一般的な一眼レフカメラのレンズについている焦点調節機構、いわゆる『ヘリコイド』がありません。

 このため、普通の一眼レフで使用するには相当な知識と覚悟が必要でした。

 ところが。

 最近、ミラーレスカメラが登場して、この敷居が低くなりました。

 そこで、このコーナーでは引伸ばしレンズを使うためのノウハウを後悔じゃなかった、公開していきます。




1.用意するもの

■引伸ばしレンズ

■ベローズ

■三脚

■ミラーレスカメラ




2.手順



2−1 三脚にベローズを装着する


 三脚はベルボンを使ってます。 
 最近はベルボンのクイックシューを止めて、アルカスイス互換のシューに交換しました。

 アルカスイス互換を謳っているシューや土台(ベース)なら、何処のメーカーでも使えます。

 下の写真をご覧ください。 水平パンが大変スムースなBENROの土台に、SIRUIのシューをつけた
 PENTAXのM42ベローズを取り付けています。

 M42ベローズはヤフオクで5000円前後で落札しました。

 因みに引伸ばしレンズもヤフオクで1個2000円〜10000円前後で落札できます。


 まずはこんな感じでスッピンのベローズを取り付けます。





2−2 ベローズに引伸ばしレンズを装着する


 今回は75mm〜135mmの引伸ばしレンズを用意しました。
 
 何処でもベローズを持っていく…のはさすがに重量的に辛い場合があります。
 できれば軽量化された簡単なシステムのほうが嬉しいのです。

 そのため、
   『カメラとレンズの間にどれだけの延長筒とヘリコイドを入れれば間に合うのか』
 を実測する必要がありました。

 この事例では、引伸ばしレンズの焦点距離により実測値としてカメラマウント面とレンズマウント面間の
 距離を測る必要があったのです。

 まずはM42ネジマウントにライカL39ネジマウントのアダプタを介して引伸ばしレンズをつけます。

 レンズはNIKONのEL NIKKOR 135mm F5.6。
 このレンズのマウントはL39ネジマウントです。

 殆どの引伸ばしレンズはL39を使っているようですが、150mm以上やドイツ製のローデンシュトック、シシュナイダー
 等はマウント径が色々ありますので要注意です。

 因みにNIKON のEL NIKKOR 150mmF5.6 (150mmF5.6Aの前身)は、マウント径が53mmで現在どこのメーカーも
 その径のアダプタを発売してません。  えらい難儀して対応しました。その経緯は別途。



2−3 ベローズにカメラ側マウントを取り付ける


 PENTAXのM42版ベローズは下図のようにカメラ側のマウントが取り外しできます。
 マウント横のネジを緩めて引っ張り出します。
 


  


 次にトミーテックのBORG用のネジ径変換リングを取り付けて、SONY NEX用マウントアダプタを取り付けます。



2−4 カメラを取り付ける


 2−3で取り付けたカメラマウントにSONYのNEX (当方の場合は初代無印NEX-5)を取り付けます。

 NEXはレンズや本体ボディキャップを外すと撮像デバイスが剥き出しで少々心許ない感じです。
 剥き出し=ホコリが付き易いのです。  可能な限り素早く取り付けます。

 下図が取り付けが完了した状態です。

 先にレンズを取り付けたのは、ベローズにフタをしている意味合いがあるからです。





2−4 ピントを合わせる


 ピント合わせのためのヘリコイドを持たないカメラシステムが出来上がりました。

 ここでピントを合わせるためには、
  (1) 引伸ばしレンズ側のマウント面を前後方向に移動する
  (2) カメラが取り付けられたマウント面を前後方向に移動する
  (3) 超近接撮影なら、ベローズ自体を前後させる

 こうした目的のためのネジが都合3本付いています。

 レンズ側とカメラマウント側、そして三脚側に3つ大きなネジが付いています。
 このネジを廻してピントを合わせるのです。

 



 レンズ側から見たところです。

 このシステムの最大の欠点は、
   撮影するまでの準備時間が異様に長い

 今まで説明したような手順を踏まないと、まず真っ当な撮影は不可能です。
 これがベローズが廃れた最大の原因だと思ってます。



2−5 測定する


 今回の最大の目的、レンズマウント面からカメラマウント面までの距離をレンズ毎に測定です。

 測定にはご覧のとおり、JIS1級のものさしを使用しました。
 これが一番手っ取り早し測定方法です(笑)。




2−6 思いつきで試してみる


 このシステムはある撮影で実戦使用を考えています。

 引伸ばしレンズは比較的小さい部類に入ります。
 レンズ本体は拳骨半分程度です。

 このレンズが金網の隙間に容易に入ります。
 なので跨線橋の金網を潜り抜けて列車を俯瞰撮影できそうな塩梅です。

 そのためにはベローズではなく、レンズ+延長鏡筒 + ヘリコイド + カメラ

 の構成が必要です。


 下図は、ヤフオクで落札したM42延長鏡筒をつけてみました。
 この長さ分、ベローズも短くなります。 

 要するにレンズの後ろ端〜カメラの撮像面の長ささえ決まれば、途中に何を入れてもOK、なんです。


 既にNEX用M42対応ヘリコイドは入手しましたので、後は適当な延長鏡筒をトミーテックから調達すればOK.

 今回の試し撮りの目的を達成しました。




3.作例

3−1 作例1

 多分、FUJINONの90mmか105mmクラスです。
 
 その道の達人は画像のシャープさでFUJIかNIKONを見極めるようですが、
当方そこまでシビアなメダマは持ってません。

 キリっと写れば良しとしてます。


3−2 作例2

 今回持参のレンズで一番長い焦点距離が135mmでしたので、多分そうでしょう。

 下の画像はご自身のPCにダウンロードして頂いても結構です。
 そこで画像ビューワーか加工ソフトで観察してみてください。

 ワイヤーやアンテナ細部までかなり精緻に写っています。

 因みに色合いと適正に、寸法を原寸から横2000ピクセルに縮小した以外は手を加えてません。


3−3 作例3

 これは撮影テスト最後の方でしたので、El NIKKOR 135mmF5.6です。




 いかがでしたか?

 レンズよりは周辺装置に投資が必要ですが、結構な写り具合だと思いませんか?